誰もが悩むだろう究極の選択を問いかけることで、
何を正義とすべきかを読者に考えさせる本。
筆者(ハーバード大学で一番人気のある講義をしている
教授)の考えを哲学の土台の上で論じることで、筆者なり
の答えを伝えてくれる。
筆者が出した例の一部:
①あなたは、ブレーキの効かない電車の運転手で、前方
の線路上に5人の作業員がいるのを見つける。このままいくと、彼らをひいてしまう。しかし、彼らの手前に待避線があり、そこへ曲がればそれを避けることができるが、待避線上にいる1人の作業員をひいてしまう。
あなたならどうするか。
②あなたは、ブレーキの効かない電車が5人の作業員をひきそうになっているのを、近くで見ている。今、隣にいる太った男を突き落とせば、電車は止まり、5人は死なずにすむ。
あなたならどうするか。
③フロリダ州がハリケーンによって大きな被害を受けたとき、フロリダ州ではモーテルが40ドルから160ドルへと跳ね上がり、水が2ドルから10ドルになった。この不当な価格によって、フロリダ以外の場所からフロリダへ多くの物資や人が集まり、復興を早めることができる。
ではこの価格は正しいだろうか。
④時限爆弾がしかけられた場所を知っている可能性がある人を拷問し、場所を特定する。その爆弾が爆発した場合、数千人に影響が及ぶとすれば、たとえ場所を知らない可能性があったとしても、情報を得ようとすることは必要だ。
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まず、最初に話されることは、世の中にある幸福を最大化すると、世の中は幸せになるのかという問い。
この話は、人の価値が金額に置き換えられていて興味深い。
アメリカの高速道路の制限時速を10マイル(16キロ)引き上げることで、節約された時間による経済的効果と、それによって増えた死者数を考えると、一人の命は154万ドルらしい。
ただ、この世の中の幸福を最大化するという考えは、すべての幸福を量ることができないという理由で行き詰まる。
カントによると、本当に自由な状態は、こうあるべきだという強い信念に基づいて行動するときだけらしい。
おいしいアイスクリームを食べたいから食べている時は、食べたいという欲望に支配されていて自由じゃないらしい。
カントやロールズの話は興味深かったが、途中で何の話をしているのかよくわからなくなった。
あと、おもしろかったのは、
人間は物語の中に生きているため、私は今どうするべきか。の答は、
私はどの物語の中に自分の役を見つけられるかという問いと同じである。
そのため、過去の自国が犯した罪から逃げることは、自分の物語から逃げることになる。
国を誇りと思うということは、自国の歴史の責任を負うことである。という話。
他には、
現在、道徳的・宗教的価値観について議論を交わすことを避けようとする傾向にある。
そのため、公共の言論の貧困化をまねいている。
つまり、事実を伝えることしかしないため、議論ができず、新しく起こった出来事を次々にただ伝えるだけになってしまうということ。
とか。
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他の人のレビュー
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2010/05/post-9b19.html
http://d.hatena.ne.jp/huyukiitoichi/20100605/1275671247
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/100711/bks1007110750005-n1.htm
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